カルダス CARDAS A8 Ear Speakers

特異な個性を放つ、ケーブルメーカー『Cardas』からイヤホン◎特徴 ■デュアルマグネットウルトラリニアスピーカー搭載Cardas A8 Ear Speakers 30th Anniversary Editionは、Cardas Audio創設30周年を記念して登場したイヤースピーカーです。A8 Ear Speakers 30th Anniversary Editionは、デュアルマグネット10.85mm径ウルトラリニアスピーカーを搭載し、高域から低域までとてもバランスよく、非常にクリアーで瑞々しいサウンドを奏でます。一番重要な美点は「音楽性豊かな再生音」ということに尽きるのです。Cardasはこの一点に拘り開発に時間を費やしました。■フレキシブルデュアルケーブル採用軽量かつ柔軟でユニークなデザインのケーブルラップは、ファイバーコアの周りを包み込んでいるためにケーブルに力が加えられたときでもストレスを与えません。L/R各チャンネルにそれぞれのコンダクターが与えられチャンネル間が分離されているので明瞭な音像を描きます。 ◎スペック ■仕様型式:ネオダイナミック・カナル型スピーカー:デュアルマグネット10.85mm径ウルトラリニアスピーカー本体材質:ソリッドブラス（真鍮製 無垢材からの削りだし）プラグ:3.5mmTRS ステレオミニプラグケーブル:フレキシブルデュアルケーブルケーブル長:1.3m（全長）同梱品Cardas A8 30th Ear Speakers x 1ペア、イヤーチップ（シリコン大・中・小） x 3ペア、イヤーチップ（Comply社製 T-400） x 1ペア、キャリングポーチ（Cardasロゴ入） ケーブルメーカーとして著名なCardas Audioから30周年記念イヤホンとしてA8のアニバーサリーモデルが登場。個人的にノーマルモデルのA8を愛用していたので、アニバーサリーモデルが本国で発表された時から国内販売を待ちわびていました。ノーマルのA8は惜しくも生産終了となり、これがA8サウンドを手に入れられる最後のチャンスかもしれません。ノーマルモデルとアニバーサリーモデルとでは仕様と音質が少し異なります。仕様としてはアニバーサリーモデルは真鍮筐体にブラッククロームメッキが施され、ケーブル等のカラーリングもブラックを基調としたものに統一されています。これにより、ノーマルモデルで発生した筐体の緑青が解消され、高級感も増しています。また、ケーブルはノーマルモデルでは2.5mmの専用バランスケーブルにY字分岐部分で交換可能でしたが、アニバーサリーモデルではケーブル交換は不可。その代わりにY字分岐部はかなりコンパクトになっています。ノーマルモデルのA8でバランスとアンバランスを聴き比べましたが、A8のサウンドはアンバランスの方が好みだったので、バランス接続ができなくてもデメリットは感じませんでした。A8のケーブルには専門メーカーらしい音質へのこだわりがあります。見た目はごわごわとして重いイメージですが、実際にはフワフワと軽く、同社のイヤホンEM5813 Model 1のケーブルの様に取り回しに困ることはありません。本体はずっしりと重たいので、傷がつかないように取り扱い時には注意が必要です。装着感は同社のこだわりである「黄金比」が生きており、重さに関係なく耳にはジャストフィットします。A8は意外と知られていない優れたダイナミック型イヤホンですが、アニバーサリーモデルの音質も期待通り、素晴らしいものでした。メーカーが推奨しているエージングは必須なので、50時間ほど鳴らしてみて下さい。まず、低音域の量感と沈み込みに圧倒されますが、この暴れっぷりが見事に制動されていきます。ゴム毬の様に弾力があり、押し出し感のある重低音が聴けるのは、当機の他には、既に生産終了となっているMONSTER社の上位イヤホンが思い当たります。Miles Davis Tributeや、Turbineシリーズは低音が魅力的な機種ですが、A8の音質は、もう少しボーカルにフォーカスしたJamzシリーズの傾向をそのまま良くしていった様な印象です。こらがダイナミック型だと言わんばかりのパワフルでバランスの取れたサウンドは、ドライバーユニットの「デュアルマグネット」の恩恵が大きいと思います。A8の特筆すべき美点として、艶やかで明瞭なボーカルが挙げられます。男性ボーカル、女性ボーカルどちらも得意とします。メーカーが「自慢のミッドレンジ」と謳うだけあり、くっきりとした音像と、耳当たりの良いサウンドを両立。エージングが進むことによって、曇りが晴れ、明瞭感もグッと増します。音場は左右にはあまり広がりませんが、澄んだ中高音と重低音が干渉せずしっかり分離して鳴るので、それ自体は然程気にならないと思います。前方に奥行きがあり、各音域、音像が被ることなく定位してくれます。ジャズからロックまで幅広く鳴らせるA8ですが、エージングが完了すると、ミッドがローをやや上回る帯域バランスとなり、中低音域の安定した素晴らしいサウンドを聴かせてくれます。音は濃厚だけれども、澄み切っているという、A8でしか鳴らせない音質には、絶対的なものを感じます。メーカーが意図した「音楽性豊かな再生音」がここにあるのではないでしょうか。生き生きとした力強いサウンドで聴く者を魅了する。A8の真価はそれに尽きます。【レビュー日：2017/12/09】 試聴DAPはAK70MKIIです。EM5813MODEL1の持ち味が女性的な豊かなサウンドだとすると、Cardas A8 Ear Speakers 30th Anniversary Editionは男性的な、強く押し出すサウンドが見え隠れするイヤホンです。迫力と繊細さを同居させており、特に目立って美しいと感じた部分は空間表現、音の広がりです。楽器、声、それぞれ定位を感じやすく、ワイドな印象を持ちました。残響音も美しく、細かく、細かく、ドラマチックに減衰していきます。ベースとなったモデルよりも、ややギラギラとした解像度の高さを感じられます。装着感に関してはかなりよくなったとはいえ、少々筐体が重たいように感じました。1Dが好きなお客様は、1度は聴くべき名作だと思います。【レビュー日：2017/12/09】