通常の7.5cmPaK39 L/48とは異なり車体全体で主砲発射時の反動を受け止める固定砲架(シュタール)型のヘッツァーです。大量生産の予定もありましたが実際は少数生産に留まり、内一輛はディーゼルエンジンに変更され38(D)駆逐戦車の試作的存在となりました。このキットはその車輛を再現しています。
車体上下と履帯・エッチング等以外にランナー4枚とパーツ数が抑えられた作りですが、レビュータイトル通り案外手間のかかる部分が散見されます。
履帯は連結可動式ですがピンが短くやや信頼性にかけます。また履板同士の合わせが非常にタイトなので起動輪や遊動輪に巻き付ける程度の角度をつけるのも苦労します。
履帯に限らず、このキットは合わせが良いものの基本タイト気味なので、仮組み時に深くはめ込むと外すのが大変になってしまうので注意。
転輪は前期型のボルト数が多いタイプがセットされ、ボルトを削り後期型転輪に変える指示がされています。
両面32個×8枚の転輪でボルト飛ばし&整形をすることになるので、さすがにこの部分は最初から後期型転輪をパーツ化しておいて欲しかったところです。
履帯と併せてアフターパーツや他キットからの流用をすると作業量はずっと減ります。
ディーゼルエンジンはじめ機関部が再現されていますが、ハッチを開口した状態で製作しない限り殆どの部分は完成後見えなくなります。なので省略しても問題無いのですが、唯一(C22)のみ上面のエッチングメッシュ越しによく見えるので、これだけは取り付け&塗装しておいた方がいいです。
私の組み立てに問題があったせいかも知れませんが、一部車体上部と干渉する部分があったので該当箇所を削っています。
上面の擬装網取り付け用ループはエッチングが用意されてますが強度が確実に足りないので真鍮線をUの字型に加工して置き換えています。ガイドモールドをピンバイスで開口し、やや長めに切ったUの字真鍮線を差し込んだあとに内側で曲げて接着固定するとまず外れなくなります。ループ自体を省略する場合はガイドモールドをサンディングしておいた方が良いかと思います。そのままだと案外目立ちます。
ペリスコープガードやサイドスカートステーもエッチングオンリーで再現されているので小さい金属パーツが多いキットです。メタルプライマー・サーフェイサー処理は必須となります。
他にエンジンパネルのハッチハンドルはプラでの再現ですがこちらも芋付けになるのでやはり強度的に不安があります。作業の一番最後に付けるか、ループ同様穴開け&真鍮線加工しておくといわゆる「ポロリ」を防げます。
サイドスカートは一体パーツなので一部を取り外したりズレた状態を再現するならば切断することになります。
塗装指示は一種類のみですが、カラー印刷で省略されがちな右側面も表記された丁寧なものです。デカールも基本的な種類が用意されています。
ヘッツァーシリーズは独自の迷彩色や迷彩パターンが知られるのでそれらを参考にして塗るのも楽しいかと思います。
私はグラウ・グリュン・ロートブラウンの三色にエルフェンバインの帯が走るパターンを試してみました。
ヘッツァーと並べると(レビュー画像のものはタミヤの中期型)様々な相違点が分かり面白いです。
主砲防楯と装甲カラーが小型化し、機関部パネルの密度が増したため全体的に精悍さを増した印象です。
なんだかんだでシュタール型の1/35インジェクションキットはこれだけなので、ヘッツァーシリーズが好きな方にはおススメです。