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商品の説明 | 権威に抵抗する青年の反抗心を、一人称のリズミカルな文章で描いた傑作。 1962年、イギリス映画『長距離ランナーの孤独』(監督トニー・リチャードソン)原作。 同作で主演トム・コートネイが英国アカデミー賞最優秀新人賞を受賞。 “おれはどんなことがあったって奴らに見せつけてやるんだ、誠実とはどういうことかを” クロスカントリー競技会で優勝を目前にしながら走るのをやめ、感化院長などの期待に見事に反抗を示した非行少年スミス――社会が築いたさまざまな規制への反撥と偽善的な権力者に対するアナーキックな憤りをみずみずしい文体で描いて、青春の生命の躍動と強靱さあふれる表題作ほか7編収録。訳者解説および著作年譜を付す。 【目次】 長距離走者の孤独(The Loneliness of the Long-Distance Runner/訳:河野一郎) アーネストおじさん(Uncle Ernest/訳:丸谷才一) レイナー先生(Mr Raynor the Schoolteacher/訳:河野一郎) 漁船の絵(The Fishing-boat Picture/訳:丸谷才一) 土曜の午後(On Saturday Afternoon/訳:河野一郎) 試合(The Match/訳:河野一郎) ジム・スカーフィデイルの屈辱(The Disgrace of Jim Scarfedale/訳:河野一郎) フランキー・ブラーの没落(The Decline and Fall of Frankie Buller/訳:河野一郎) 解説:河野一郎 本書収録『長距離走者の孤独』より おれは走路を駆けて行った、大動脈をボールダーダムのようにせきとめられた心臓と、木工の万力に挟まれたみたいにギリギリしめつけてくる釘袋をかかえ、しかし両足は鳥の翼のように軽く、両腕はいつでも競技場をひとっとびに飛んで獲物をさらってくる猛禽の爪のように鋭く。ただおれには、そんな見せびらかしをするつもりはなく、まかりまちがってもレースに勝つつもりはなかった。今ゴールへ向かって走りながら、おれは乾いた暑い日の香りをかぎ、仲間が芝刈機の前に取りつけた罐から空けた草の山のそばを走り抜ける。……(本書77ページ) アラン・シリトー Sillitoe, Alan(1928-2010) イギリスの作家。労働者の息子としてノッティンガムに生れる。19歳で空軍の無線技手となるが、肺結核にかかり療養中に創作を開始。1958年、労働者階級の生活を内側から描いた『土曜の夜と日曜の朝』で一躍有名になる。『長距離走者の孤独』『華麗なる門出』等、著書多数。 丸谷才一(1925-2012) 山形県鶴岡市生れ。東京大学文学部英文科卒。1967年『笹まくら』で河出文化賞、1968年『年の残り』で芥川賞を受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動を展開。『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)『裏声で歌へ君が代』『後鳥羽院』(読売文学賞)『忠臣蔵とは何か』(野間文芸賞)『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞)『持ち重りする薔薇の花』など著書多数。訳書にジョイス『若い藝術家の肖像』(読売文学賞)など。2011年文化勲章受章。 河野一郎 1930年、大阪府生れ。英文学者、比較文学者、翻訳家。東京外国語大学、フェリス女学院大学名誉教授。専門は現代イギリス文学。カポーティ『遠い声遠い部屋』、E・ブロンテ『嵐が丘』、『ロレンス短篇集』、『対訳英米童謡集』など多くの訳書がある。 |
主な仕様 |